講談社学術文庫大文字版オンデマンド

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上記の画像は文庫版(元本)のカバーです。本の内容をお伝えするために掲出しました。「大文字版オンデマンド」の表紙は、全点統一デザイン。カバーはつきません。

人間の条件

シリーズ:西洋の古典

¥ 3,850 (本体: ¥ 3,500 + 消費税: ¥ 350)
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商品説明

◆重要◆
【表紙のデザインについて】
・この本の表紙は、
商品画像2枚目にあるサンプルと同様の
統一フォーマットになります。

【内容紹介】
1957年10月4日、ソヴィエト連邦によるスプートニク1号の打ち上げによって、人類は初めて人工衛星を軌道周回させることに成功した。これは「その重要性において並ぶもののないこの出来事」だったが、「奇妙なことに、湧き起こってきたのは勝利に満ちた喜びではなかった」――翌1958年に英語版が出版された『人間の条件』は、そう始まります。こんな書き出しをもつ哲学書は前代未聞と言えるでしょう。
では、人工衛星の実現が人類にもたらしたのは何だったのか。そのとき人類は「これでようやく「地上という牢獄から人間が解放される第一歩」が踏み出されたという安堵の念」を抱いた、と本書の著者ハンナ・アレント(1906-75年)は言います。確かに、人々は「地上」で十数年前まで激しく戦われていた二度目の世界大戦がもたらした凄惨な状況を鮮明に記憶していたことでしょう。その悲劇を引き起こした原因を、アレントは7年前に大著『全体主義の起源』(1951年)で分析してみせました。今や、それを「人間の生活(生)」という観点から哲学的に考察することを企てたのが、本書『人間の条件』にほかなりません。
科学と技術の進化によって実現された地球からの脱出――それは、アレントから見れば、「地上」の世界からの「飛翔(flight)」であるとともに「逃避(flight)」でもありました。その二重の意味を込めて、アレントは「世界からの疎外(world alianation)」と呼びます。その疎外はいかにして始まり、人間の生(生活)をいかに変えたのか。この問いに答えるために、アレントは人間の生活(生)の重心が「観照的生活(vita contemplativa)」から「活動的生活(vita activa)」に移行したことを明らかにします。その上で「活動的生活」を「労働(labor)」、「仕事(work)」、「行為(action)」の三つに分類し、それらの絡み合いの中から科学と技術が生まれ、進化を遂げるに至る道筋を細やかにたどっていくのです。
本書が書かれてからすでに半世紀以上が過ぎ、科学と技術は当時では想像もできなかったほどの飛躍的な進化を遂げています。AIの登場によって「人間」とは誰なのかが不分明になりつつある現在、「人間の条件」を考えることの重要性と必要性がさらに増していることに異論はないでしょう。長らく待望された本書の新訳を、第一人者による正確にして平明な日本語でお届けできる時がついに訪れました。


【目次】
プロローグ

第I章 人間の条件
1 「活動的生活」と人間の条件
2 「活動的生活」という用語について
3 永遠と不死

第II章 公的領域と私的領域
4 人 間―社会的動物か、政治的動物か
5 ポリスと家政
6 社会的なものの興隆
7 公的領域――共通のもの
8 私的領域――財 産
9 社会的なものと私的なもの
10 人間の諸活動の位置

第III章 労 働
11 「わが肉体の労働とわが手の仕事」
12 世界の物的性格
13 労働と生
14 労働と生命の繁殖力
15 財産による私生活の保護と富
16 仕事の道具と労働の分業
17 消費者の社会

第IV章 仕 事
18 世界の耐久性
19 物 化
20 道具の使用と「労働する動物」
21 道具の使用と「工作人」
22 交換市場
23 世界の永続性と芸術作品

第V章 行 為
24 言論と行為による行為者の開示
25 関係の網の目と演じられる物語
26 人間事象の脆さ
27 ギリシア人の解決
28 権力と現れの空間
29 「工作人」と現れの空間
30 労働運動
31 行為の伝統的な代替としての制作
32 行為の過程としての性格
33 不可逆性と許しの力
34 不可予言性と約束の力

第VI章 活動的生活と近代
35 世界からの疎外
36 アルキメデスの点の発見
37 宇宙科学 対 自然科学
38 デカルト的懐疑の興隆
39 内省と共通感覚の喪失
40 思考と近代的世界観
41 観照と活動の関係の逆転
42 「活動的生活」内部での転倒と「工作人」の勝利
43 「工作人」の敗北と幸福の原理
44 最高善としての生命
45 「労働する動物」の勝利

謝 辞

訳者解説
索 引


著者
ハンナ・アレント
【略歴】
1906-75年。ドイツに生まれ、アメリカで活躍した哲学者・政治思想家。主な著書に、本書(1958年)のほか、『全体主義の起源』(1951年)、『革命について』(1963年)など。

訳者
牧野 雅彦(まきの・まさひこ)
【略歴】
1955年生まれ。専門は、政治思想史。著書に、『精読 アレント『全体主義の起源』』、『危機の政治学』(以上、講談社選書メチエ)、『アレント『革命について』を読む』(法政大学出版局)ほか。

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